「結界」とは今日では超能力のバリヤーの様なモノとして描かれる事が多いのですが本來の意味としては「神聖な空間乃至異界との境目」との内容が含まれており、それは総じて見て「神聖にして穢すべからざる場所」や「聖なるエネルギーを保持した空間」や「無暗に入ってはいけない場所」とされる謂わば禁足地に多い事から「邪悪が入れない障壁」として受け取られる事が多い様です。
尚、我が大和言葉では「端境」乃至單に「境」と表されるものでございます。
「聖」と「俗」との領域を分けるものとしての結界は廣義の解釈では襖や戸と云った「建具」や屏風や衝立等の「調度品」にもその意味合いが含まれておる様でございます。
例えば以前コルクボードで製作した枕屛風もその類の意味合いがございます。
枕屏風の活躍する部屋 - 一人を楽しむブログ (hatenablog.com)
当該枕屛風に附きましては上記の記事に詳しくございますが、一つの部屋の空間を用途や目的に応じて仕切る事は言わば「異界」との境目に相當するのでございます。
お部屋のメリハリに
部屋とは一つの空間でありますが「寝室」「食堂」「納戸」或いは「風呂」や「便所」と云った風に使い方や作られた目的が或る程度定められているものでございます。
部屋数の多い家に住んでみると實感致しますがどの部屋が何であるかと云う事は住まう上でそれなりに重要になります。
「ワンルーム主義」と云った風に全ての生活を一つの部屋で終始させた方が居心地の宜しい方も少なからずいらっしゃいますが、それはとても効率的で多機能であり、尚且つ日々の手入れも樂なものです。
しかし、例えば出來の惡いRPGの如く只の大部屋にベッドが置いてあり、そこから何の隔ても無く台所や便器、流しと云った色々な物がゴチャ混ぜに配置されているとすると、余程整理整頓の巧い方やあらゆる情報を同時に処理出來る方でなければ、その空間は落ち着きの無いものになる事もまた事實であります。
日々の生活は色々な活動を伴うものでありますればその一つ一つが樂しい方向に持っていけた方が氣が休まるのであります。
例えば同じ面積・環境下にあったとしても寝室で寝るのと台所で寝るのとはいさゝか違ってくるのであります。
…とは申せ、私の部屋の間取りは6畳の1K。
部屋など台所と便所と風呂と居室しかありません。
それでも色々と「部屋に居る」事を愉しみたいものですから、そこで私も「結界」を作り出してしまおうと考えた次第でございます。
これで貴方も「結界師」
日本では襖や障子、暖簾と云った物で生活の場を區切る事が多い様に見受けられます。
一つの續き間であってもそれらで區切られる事は多く、その場合、區切られた場所毎に使われ方も違ってくるのであります。
まずキモとなるのはその空間の「境界」でございます。
これは先の枕屏風をご覧戴き凡そのイメーヂを持って戴ければ幸いに存じますが「何かで區切ってみる」事が重要です。
これは部屋の兩端に物干し竿を渡してすだれと蚊帳を吊った今時分仕様の自室なのでありますが、最も簡單に申し上げればこう云う事なのであります。
有ると便利な物干し竿 - 一人を楽しむブログ (hatenablog.com)
部屋を渡す物干し竿に附きましては上記記事をご參照戴ければと存じます。
これは寝る空間と晩酌等をする空間とを隔てているのでありますが、これだけでも寝る前のひと時が樂しくなるものです。
また、單に部屋を區切って使うだけでなく、こうして外界の影響を和やかにしてくれる作用もございます。
蚊帳の中も「寝る空間」としての演出を強めてくれます。
只の1K部屋でも夏の夜はこうすると、とても穏やかな時間が流れるのです。
もう一つキモとなる要素がございます。
それはその空間への「入口」です。
「邪」を寄せ附けぬ結界作り
例えば神社の鳥居を思い浮かべると解り易いかと存じますが、あれは神域への一種の「門」であり、あれが有るとその空間の特別な意味が解り易くなります。
然らばその「門」を作れば良いのです。
「門」とは「入口」の事であります。
部屋の入口には多くの場合、扉やら何やらの建具が標準装備されているかと存じますが、それはあくまでも「標準装備」の域を出ません。
それを更に強める「オプション」が鍵を握るのであります。
賃貸部屋の場合、建具に手を加えると原状回復の時に面倒になります。
建具は壁と違ってクロス等で補修が出來ないからです。
そこで建具ではなくその周りを工夫してみる事に致しました。
それがこちらです。
部屋の入口、即ち玄關にこの様に暖簾を掛けれみるのです。
この暖簾と云うのはなかなか便利な物でありまして「見ちゃダメなモノ」が轉がっている私の部屋の中を玄關から見えなくさせる事はそれなりに重要なのであります。
また、帰宅時に直に部屋の中が見えないと云うのもなかなか良いもので、玄關でワンクッション置くと帰宅時の安らぎも増すのであります。
同時に玄關そのものを工夫しておくと効果も倍増であります。
玄関のDIY(前篇) - 一人を楽しむブログ (hatenablog.com)
玄関のDIY(後篇) - 一人を楽しむブログ (hatenablog.com)
この玄關に掛かる暖簾でありますが、暖簾單体では効果は薄いと思い、その周りに造作を用意してみました。
それがこのひさしの様な物でございます。
この造作は宮城縣某所の呑み屋で見かけた座敷の入り口を參考にして造った物です。
暖簾にひさしが加わると益々「入口」の感が強まり、そこを通り抜ける事がいさゝか面白くなるものでございます。
同じ様な物はお風呂場にもあります。
「これから風呂に入る」と云う當り前の事でも雰囲氣があるとそれなりに違ってきます。
つまり「空間に入る」事を面白く演出する事が結界作りの鍵なのであります。
入口を面白く
簡單な造作でありますが、私の住まいが賃貸物件なので當然原状回復を考慮して製作致しております。
この稚拙な繪はその概略圖でありますが、斯くの如く突っ張り棒を段違い平行棒の如く2本用意し、その内側に暖簾を、上部に適當な板材を被せて固定します。
私はこの様に100均ショップに賣っているすだれにホームセンターで賈ってきた竹材を割った物を取り附けて恰も屋根の様に拵えました。
そしてこの様に突っ張り棒に暖簾とひさしになる板材を取り附けます。
この暖簾を取り附ける位置よりも低い箇所にもう1本の突っ張り棒を取り附けます。
折角なのでついでに色々と括り附けております。
小物置きとなっている「素麵の木箱」に玄關を開けた時に風で鳴る「風鈴」です。
あとは先の画像の如く勾配の附いた屋根の様にひさしと暖簾の附いた突っ張り棒を取り附けて紐等で固定すれば完成であります。
仕組みが單純であるので様々に工夫すれば色々な「入口」を造り上げる事が出來るかと存じます。
例えば上に被せるひさしの部分を輕量の板材を組み合わせて作成し暖簾ではなく幕を張る様にすればその形状は大きく変わってきます。
木ではなく薄い板金を用いたり、ひさしに色を附けたり、幕をレースのカーテン等にすれば雰囲氣も大きく違ってくるでしょう。
また、上部のひさしを水平にし、すのこを用いてパーゴラの如く見せる方法もございます。
突っ張り棒にはカーテンリング等でカーテンを取り附け開閉可能にする事も可能でしょう。
(この場合、あまり分厚い布を用いると重さに耐えきれず突っ張り棒が落下する事故が考えられますのでなるべく輕量に仕上げる事が肝要です)
部屋の入口、或いは廊下等、間口の狭くなっている部分に取り附けるのが順當かと存じます。
「結界」が空間を面白くする
和風にするか洋風にするか、或いはどこかの民族的な雰囲氣にするかはそれぞれの創意工夫に依るところでありますが、ご自分のお部屋をどの様な空間にして愉しみたいか、それを考えてみると面白いかと存じます。
一見、仕切りがあると云うのは面倒な氣も致しますが、それによって演出される雰囲氣が大事なのであります。
或いはそれは無味乾燥とした「ツマラナさ」を拒む所謂一つの「結界」なのではないでしょうか…。