以前、戰國時代の陣中食として「変わり味噌玉」を作りましたが、今回は同じく「兵糧丸」と「飢渇丸」を合わせた様な物を作ってみました。
これは俗に言う「忍びの者」イマドキの表現で「忍者」と呼称される者が用いていたと専ら有名でありますが、足輕や武将も各人で工夫した似た様な携行食を持參しており、隠密だけの物ではなかったと云うのが真實の様であります。
しかしその製法は地域や家、或いは集団に於いて幾種類も有りますが半ば秘傳となっている物が多く、数少ない文献や郷土資料に散見される物が今日にその製法を傳えているところであります。
私もこの資料を基に製法を研究、今手に入る材料を使って作ってみました。
流石に當時と同じ様に作るのは無理なので、そこは獨自に工夫してスーパーマーケット等で手に入る物で代用していきます。
尚、有名な「兵糧丸」と同じく「飢渇丸」と云う似た様な携行食も有り、そちらの製法も參考に致しております。
作り方
材料
もち米・・・・300g
蕎麦粉・・・・150g
ハト麦・・・・200g
くず粉・・・・30g
きな粉・・・・30g
砂糖・・・・・250g
山芋・・・・・約200g
養命酒・・・・120ml
榮養ドリンク・100ml(隠し味として適宜)
工程
1、材料を粉末にする。山芋は擦りおろす。
本來であれば山芋も乾燥させたものを粉末にするのですが、面倒なのでとろろにしてしまいます。
2、擦りおろした山芋と養命酒、榮養ドリンクを加えてよく練り合わせる。
本當は色々な生藥が配合されているのですが、そんな物は手輕に入手出來ないので養命酒を代用として使う事にします(似た様な物だと思います、多分………)
普段は小さなお猪口で飲む養命酒もドボドボと120mlも使います。
風味附けに榮養ドリンク乃至葛根湯を入れると甘味が増します。
3、出來たタネを冷暗所で暫く寝かせる。
その儘の状態では粘度が低く、成形が難しいのです。
4、タネをピンポン玉大にして蒸し焼きにする。
本來の兵糧丸は丸藥程度の大きさでしたが、面倒なので飢渇丸サイズにします。
5、出來上がり
竹串等を挿して粘り氣が無くなっていれば出來上がりです。
焼き上がりは柔らかく、食感としてはソフトクッキーの様な感じです。
尚、焼いている途中で扁平になってしまっても焼き上がり直後に丸めれば問題ありません。
折角の兵糧丸なので丸くする事が大事です。
氣になるお味は…?
味は甘い漢方藥の様な味です。
養命酒が入っているのですから當然ですが、口當たりは宜しい様です。
ハト麦のプチプチとした食感が獨特です。
古文書に飢渇丸は「三粒で心身共に萬全の備え」とある通り、3個食べるとそれなりに空腹が満たされます。
流石に1日3個と云う訳にはいきませんが、1回の食事としてはかなりのボリュームです。
材料にかなりの量の穀類が入っているので熱量も充分かと存じます。
また漢方藥の効き目からか、食べていると軆が熱くなってきます。
科學的な榮養価は解りませんが、空腹を満たすには充分です。
現代社會に活きる忍びの技
長期潜伏を余儀なくされる忍びの者は有事の際まともに食事をする事など出來ません。
時として小動物や虫、雑草或いは土等も食べられる様に日頃から訓練されていたと聞きます。
そんな折に持參したこの携行食ですが、元々がそう云う物なので或る程度保存も利きます。
こうして焼き上がった物は現代文明の利器なる冷蔵庫で数日間は保存が出來ます。
また焼かなかったタネもこうして適當な容器に移し、密閉しておけば1週間位は持ちます。
何かと忙しく、料理の時間の取れない時に備えて豫め用意しておくと非常に便利なのです。
勿論、榮養バランスを考えますると野菜等の副菜が必要ですが、小腹を満たす目的であればコンビニ等で賣っている物やジャンクフードの類に手を伸ばすよりかはずっと健康的かと存じます。
時は戰國時代の如く修羅に満ちています。
古の時代の知恵が現代社會を生きる我々に利するのです。
現代風アレンジ
本來は蒸し焼きにするのですが、この通り油で焼いても食べられます。
表面に輕く焦げ目が附く位が丁度良い焼き加減です。
ハンバーグかパンケーキの様にして戴きます。
元々が甘いのでそのまゝ食べられます。
忍びの者の如く、日々過酷な任務の有るべしなのです。
そんな折に今日も食する兵糧丸。
兵に臨んで闘う者は皆陣列前に在りです。