前回の續きでございます。
チェックインをしてお部屋で一息ついたら、お風呂へ出かけるのであります。
そのお風呂は最近になってコテージ群の中に天然温泉を新しく作った様ですが、そこには行かず昔乍らの場所へ向かう事と致します。
コテージから自轉車を漕いで15分程かけて移動します。
どこへ行くにもこうした移動があるのが却って樂しいものです。
かの「エアロビクスセンター」へ
今では「メディカルトレーニングセンター」とか言うハイカラな名前ですが、ここは昔「日本エアロビクスセンター」と呼ばれており、子供時代から通称「エアロビ」の名前で呼んでおります。
ここではこの「日本エアロビクスセンター」或いは「長柄ふる里村」と云う名前を知っていたら相當の古參です。
古株の従業員さんからも一目置かれます。
この施設の詳細は後日載せますが、階高が高いので5階建位の高さがあります。
ここに思い出の大浴場があるのです。
随分構えが変わってしまいましたが、ここが大浴場入り口です。
今では「長柄カルナの湯」と云う名前を冠しています。
昔はこんな入り口でした。
お風呂自軆もだいぶ様変わりしており、時の流れの無常さを感じます。
これより先は更衣室となっているので撮影は出來ません。
お風呂の暖簾は謂わば結界。その先は聖域なので撮影は御法度です。
但し、その手前の休憩室はこんな感じです。
静かで上質な空間。
昔はもっと大衆向けな雰囲氣の休憩室とマッサージルームがありましたが、これはこれで良きものです。
ハーブの香りのする冷たい水が飲めます。
お風呂上りに好適なアイテムです。
部屋の奥にはこうした一寸したお洒落な遊技台があります。
まさしく高級リゾートクラブのそれです。
お風呂上りにこうした場所でくつろぐと云うのはなかなか無い機會でございまして、心身共にとても良いものです。
こう云うひと時は静かに佇む内に全力で味わうのが私の愉しみ方です。
椅子に腰掛けて静かな音樂を聴き、冷たいハーブウォーターを口にする。そんな上質な時間を満喫出來るのであります。
尚、このリゾートは何かとスイス國と關わりのある場所でございまして、こうした展示品も愉しむ事が出來ます。
宙に浮いている様に見えるこの大きな笛。實は天井から細いワイヤーで吊ってあります。
お風呂上がりの樂しみ・其之弐
お風呂に入ってさっぱりしたら自轉車を漕いでコテージに帰ります。
こちらは所謂「ショートカットルート」です。
昔から在る抜け道ですが、トンネルの先には階段が待っています。
しかし坂道をぐるっと廻り込んで登るよりは少しだけ樂です。
お風呂上りに自轉車で森の中を走ると心地よい風を感じます。
緑の匂いは夏の夕暮れの空気に触れて尚一層軆中を突き抜けて參ります。
ヒグラシの鳴く声が絶え間無く、そこは慌ただしい日常で忘れてしまっていたものをいっぺんに取り戻せそうな空間なのでありました。
コテージに帰って參りました。
さあ、ウッドテラスで一杯やりましょう。
夏の夕暮れの涼しげな風を酒の供に乾杯。
このデッキは廣いので色々な樂しみ方が出來ます。
ラタン細工の様なソファーに座り、こうして優雅な夏の夕涼みを演出致します。
心に郷愁を誘うヒグラシの声が私をあの樂しかった過去へ送ってしまいそうな感じです。
あの頃もこうしてコテージのバルコニーでこの鳴き声を聴いていたものでした。
子供の頃から好きだったこのヒグラシの音色は實に不思議なものです。
お酒を呑んだので、自轉車はここで仕事上がりです。
今日一日長距離を走った我が愛車。ご苦勞様でした。
日暮れて出掛けよう、御夕飯
陽が沈み、辺りが暗くなる頃、御夕飯に出掛ける事に致します。
このコテージを出掛ける瞬間は樂しいものです。
お酒を呑んだのでこれからは徒歩です。
まず向かう先は夕食の會場…ではなく、その前のひと時を愉しむ森の中のバーでございます。
ここは新しく出來た場所で何となく馴染めないのですが、折角なので立ち寄る事に致します。
昼間とは違う表情を見せる森の木々を見乍ら一杯。
お洒落なジャズの流れる店内は、なかなか居心地の良いものです。
お酒の美味しい呑み方はこうした雰囲氣を上手に愉しむ事だと思います。
お酒を味わい、肴を味わい、雰囲氣も味わう。一粒で何度も美味しい、そんな上質な晩酌です。
お店の人とも少々歓談を愉しみ、愈々夕食の會場へ向かう事と致します。
抜け道を通ると昼間素通りした「ラクレマンプール」に出られます。
夕食會場への近道です。
月明かりがほんのりと美しく静まり返ったプールの水面を優しく照らしています。
御夕食はこの立派なお屋敷で戴きます。
ここは國の登録有形文化財ともなっている旧スイス大使館の建物を移築したものでございます。
その見事な造りたるや見ていて飽きが來る事はありません。
今は料亭として使用されているこの建物で食べる懐石御膳はさぞ味わい深いものでございましょう。
この建物の詳細も後日改めて書ければと思いますが、この歴史的な建造物で食事が出來ると云う事が一つの大きなイベントであります。
心して愉しむ事と致しましょう。
少し早くに到着してしまったので、中を見學させて戴きました。
こうした造作を間近で観られる機會は滅多にあるものではありません。
かの北野武監督の映画でもロケーション撮影に使われた建物です。
その映画をよく知る人なら見覺えのある場所が幾つかあります。
建造當時の状態をなるべく維持する様に努めており、その様子は目を見張るものであります。
材料は大きな杉や欅の一枚板など、今では到底入手困難な銘木が至る所で使われております。
普段は入れない2階をゆっくり見せて戴きました。
昔は畳敷きの和室でお庭の枯山水を観乍らこうして一杯出來たのですが、今回は絨毯敷のお部屋になりました。
和室の雰囲氣を愉しんでいた昔を思うと残念ですが仕方の無い事です。
帰らざる時を思い、盃を掲げましょう。
尚、私は過去に一度だけ、たまたま個室へ入れた事があります。
座敷が團軆の貸し切りだった時、たまたま案内されたのがこのお部屋だったのです。
普段は滅多に入れないであろうこの空間で食事をする事が出來ました。
洋間もたまには良いものです。
美しい折り上げ天井に上品な家具、赤い絨毯が豪華な雰囲氣を演出します。
一日の終わりに
そんな豪華な夕食を濟ませたら夜風に當たり乍らゆっくり歩いてコテージに戻ります。
途中でホテル1階の賣店で夜食を購入するのをお忘れ無く…。
この辺りは街燈がまばらで夜になると、とっても眞っ暗です。
昼間とはまるで違う森の小道に土地勘が無いと夜道を迷う事になるかもしれません。
おまけに周りはとっても静かです。時折、夜の虫の声が聞こえてきます。
コテージに戻ると大きなカマキリ君が來ていました。
自然が大きな分、虫達も元氣です。
都會ではまず見かけない大きさの虫に虫取り少年だった子供の頃の記憶が蘇ります。
玄關の戸締りをして、お樂しみはまだまだ續きます。
まずは例のウッドテラスに出ましょう。
先程來、酒を呑んでばかりですが、今日は非日常であります。
夜の静かな森の中でランプの光に照らされた酒を傾け、一人静かに過ごします。
街燈が無いと云うのはまた良いものです。
星空がよく見え、木々は黒々とした影を時折揺さぶり、静かな夜のひと時を愉しめます。
時折、他のコテージから聞こえる歓談の声もコテージ同士が離れている為、あまり氣になりません。
その樂しげな雑談の声は昔、友達と訪れた時の事を思い出させます。
自然に囲まれて、冷房ではない涼しい風に吹かれて、それは夢幻の如き良きひと時となりました。
深夜はお部屋の中で、こうして夜食を食べてゆっくりと眠りましょう。
氣附けば9月もそろそろ終わりを迎えようとしています。
明日はどんな樂しみがあるのか、それは來月に致しましょう。
續く