近所のお魚屋さんで安売りしていたイワシを賈って毎日焼いて食べていたのですが、魚は足が速いのが難点です。
そこで、中途半端に余ってしまったイワシは煮魚にする事に致しました。
しかし折角作った煮魚も決して保存が利くと云う訳ではありません。
そこでなるべく持ちが良い様に工夫する事に致しました。
傳染病の流行る昨今、あまり外出せず賈い物も頻度を1週間から10日に1回にしておりますので、食品の保存は常に考えている身の上でございます。
ヒントは戰時中の「つぼ詰」
これは戰時中に罐詰の代用として考え出された防衛食容器、通称「つぼ詰」であります。
戰争で金属が不足してきた事から強化性陶磁器で容器を代用した罐詰の様な物です。
容器の中は眞空状態で密閉されており、蓋には護謨のパッキンが施されていて開封する時は蓋の中央にある窪みに釘等で穴を開けて空氣を流入させて蓋を取り外す仕組みになっていた様です。
物資の不足する中で携行性・収納性に優れた保存食を開發していたのでありますが、實物が流通する前に終戰を迎えた為、この空き容器が當時製造していた窯元等で大量に眠っているそうです。
聞くところによると食品を詰めて完成した物が少数あり、そのまま倉庫にしまい込まれて忘れ去られていた様です。
それが約50年の歳月を經た後に研究者が未開封の物を試食したところ問題無く食べられたとの記録が有る様でございまして、その實用性は相當なものであったと思われます。
今回作る手作り罐詰はこの「防衛食」をヒントに作った物であります。
製作工程
まずはこの通り、普通に煮魚を作ります。
長時間煮込んで少し濃い目に味附けをするのがコツです。
味は醤油、砂糖、みりん、酒と至って一般的な味附けでイワシの臭味を消す為に生姜を刻んだ物を加えてあります。
イワシは罐に入る様に眞っ二つにブツ切りにしております。
次に用意する物はこの罐詰の空き罐であります。
これはフルーツの罐詰の物でございまして、護謨の蓋が附いている物を使います。
この護謨の蓋が實に使い勝手の良い物で、別の罐詰の空き罐でもしっかりハマる様に出來ております。
どうやら罐のサイズにはそれなりの規格があるみたいで、径の寸法さえ合えば色々な物に罐に蓋をする事が出來ます。
取っておくと何かと役に立つ物です。
その罐に作った煮魚を生姜ごと入れます。
なるべく隙間なく詰め込むのがコツで煮汁も一緒にめいっぱい迄入れます。
護謨の蓋に臭いが附くのが嫌なのでこの様にラップを蓋の下に挟んでおります。
しっかりと蓋をして更に輪護謨で押さえつけます。
その罐をこの様に湯煎で加熱します。
蓋がお湯に沈まない様に水位に注意します。
こうして加熱していき、罐の中身がポコポコと音がして煮立つ頃が頃合いです。
そうしたらすぐさま氷水に入れて急速に冷やします。
これも同じく蓋が水没しない様に注意します。
こうする事で罐の内部が負圧状態になり、蓋が罐に密着します。
罐の中の空氣を極力無くしてしまうのです。
陶器でこれをやると割れてしまう恐れがありますが、金属製の罐なら大丈夫です。
暫く冷やしていると蓋が凹んで罐に吸い附いた様になります。
これで出來上がりです。
後は冷蔵庫で保存しておきます。
開封・賞味
多少保存性が向上するにしても流石に本物の罐詰の様にはいきません。
数日で消費した方が良いでしょう。
…と云う訳で後日開封してみます。
こう云うのを幾つか備蓄しておくと日々の食事も樂になります。
鳥渡献立が足りない時に必要に応じて開ける事にしております。
蓋を開けると「シュッ」と空氣の入る音が聞こえて蓋の凹みが無くなります。
さっと食べて片附けも樂です。
罐は面倒なら処分してしまえば良いのです。
蓋さえ有れば代わりは幾らでもありますし、フルーツの罐詰はよく賈うので在庫も充分です。
イワシは頭も骨も全部戴きます。榮養があるのです。
刻んだ生姜も残さず大切に戴きます。
つゆも飯にかけると旨いのです。
現代に活きる戰時中の知恵
イマドキは戰争に關する物はアレルギー反応の如く激しく忌み嫌われますが、戰争の是非は別として參考になるべき色々な知恵が澤山あります。
この罐詰を作る際に參考にした「防衛食」も製造はこれとほゞ同じです。
原理としては「密閉して空氣を追い出し、加熱後に急冷させる事で負圧状態にしておく」と云うものなのです。
なにかと忙しい現代社會に暮らすお一人様の身の上としては、こう云う知恵が非常に有用なのです。
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温故知新と申しましょうか、何かと勉強になります。