それは2年前…。
まだ傳染病の「新型コロナウイルス」の一文字も世に無かった時代の事です。
私は深川に在る江戸の町の家屋が1/1スケールで展示してある某博物館に行きました。
そこで當時の街並みや家屋の造りを見學してきたのでありますが、一際興味を引いたのがこの長屋の展示でありました。
画像は6畳間の物でございますが、概ね私の部屋と同じ面積であります。
これを見て思うに、この空間を最大限に利用して日々を暮らす事は遥か時を隔てた江戸も現代も同じなのではなかろうかと云う事であります。
長屋暮らしが快適な1K部屋のヒント
この江戸の庶民の暮らしの空間には實に様々な參考にすべきヒントが隠されているものでございまして現在の住居に応用すると、これはまた面白い程實用的なのであります。
限られた空間を最大限どう活用するか。
これが最大の關心事でありますが、何しろ然程廣くない部屋でございますから、その工夫は部屋を快適な状態にする上でとても重要なのでございます。
そこで改めて件の長屋の屋内をよく観察致しますと「収納」と呼ばれる道具以外に各種造作に由って部屋を廣く使う工夫が為されております。
現代の1K部屋に必要なのはこの「造作」による収容力の拡大であります。
例えば、先の記事にてご紹介致しました「枕屏風」もその1つであります。
画像では左奥の方に立て掛けてありますが、この中には布團が収納されております。
こうして見えなくするだけでも視覺的に収容に於ける効果は大きいのであります。
更に、壁や部屋の隅には物を掛ける竹竿の様な物が引っ掛けてあります。
これも衣類を整理する際はとても重寶致します。
わざわざ衣類ハンガーを購入して設置すると部屋の面積がどんどん消費されていってしまいます。おまけに費用もそれなりにかかります。
然程数量が無ければこの長屋の暮らしの様に一寸した造作を自作した方がより効率的である場合がございます。
画像はごく簡単に竹竿の両端に縄を使って輪を作り、それをフック鋲で壁に設置するだけであります。
場合によってはスノコやワイヤーネット、突っ張り棒の類を使っても良いでしょう。
部屋の壁面は何も無い様ですが少し手を加える事に依り、意外にも収容力があるものでございます。
それを引き出す一つの方法がこの竹竿の様な「物が掛かる仕掛け」でございます。
壁面の面積に余裕が有れば高さを変えて段違いに設置したりすればより収容力は増えるでしょう。
衣類以外にも一寸した物を掛けて使えるので便利です。
S字フックを始め、最近では長押等に掛ける形の収納グッズや棚の類も賣っておりますので、工夫次第で立派な「壁面収納」を拵える事が出來るでしょう。
尚、壁との固定に使う物がフック鋲であれば退去時の原状回復でもトラブルになる事は少ないかと存じます。
そして、これまた以前記事にてご紹介しました部屋内の物干し竿でありますが、これも同様です。
壁面だけでなく、天井近くの空間も大いに利用し得るのでございます。
およそ突っ張り棒では設置し得ないものでございますが、物干し竿なら長さ強度共に申し分ありません。
この竿に掛ける物も工夫一つで色々にございます。
例えば下画像の如く適當な箱材と紐を組み合わせれば一寸した物入れになります。
全ての空間は収納スペース
ひとえに江戸の長屋暮らしに見る工夫はこの一言に有ると思います。
6畳間と云う限られた廣さですから、當然収納には限界があります。
しかし、面積でなく三次元的な「空間」で考えれば収納力が圧縮されている様なものでございまして、それを有効活用する事が肝要かと存じます。
収納スペースが無い。
無いのであれば作れば良い。
勿論ものには限度がありますが、そう云う理屈でございます。
まだまだこれ以外にもいろいろ考えられますが、それはまたいづれの機會にかと存じます……。