今週のお題「夏の思い出」
はや秋分も過ぎ、暑さの中にも秋の氣配は一段と強くなりし今日この頃でございますが、約3カ月ぶりに全くクウラ様を使わなかった1日となりました。
こんな日は本當に久しぶりです。
さて、夏も段々に遠くなりにける今日この頃、前回の續きと致します。
チェックイン迄何をかしなん
とりあえずチェックインの15時迄は数時間の空きがありますので、附近を散策する事に致します。
こういう時に自轉車は便利なものです。
ホテル前の道はこうした高い木々が聳え立ち、その前面の通りは恰も木のトンネルであります。
これがこのリゾートの概略を示した案内圖なのでありますが、とても廣大な敷地を擁しております。
その中に様々な施設が点在しており、ここはそれらを愉しむ場所なのです。
移動は基本的に徒歩か自動車になりますが、フロントに言えば車を廻して戴けます。
昔は電話1本で小型バスを手配出來たのですが、今では小さなカートの様な乗り物を見かけます。
今の案内圖の脇に打ち捨てられた様に設置されているのがこの昔の案内圖。
(恐らく現在は撤去されているか内容を更新されたかと思われます)
私はこの時代の地理を隈なく把握しているので現在の案内圖には無い場所を幾つか知っており、閉鎖された場所へ抜ける抜け道も知っています。
それをここに書く訳にはいかないので割愛しますが、ここは昔、山に拡がる森林だったのです。
そこを開発してこのリゾート地が出來た經緯があるのですが、昔の航空寫眞ではこの辺りは林の中に田畑が廣がり数軒の農家が点在していた繪に描いた様な里山だったのです。
元々がそう云う場所だったので今でも自然は生きています。
だいぶ姿が変わってしまいましたが、そんな頃の面影を感じ乍ら自轉車に跨り移動を開始致します。
まずここはホテルから近くの屋外プール、その名も「ラクレマンプール」であります。
スイスに在るレマン湖を象った全長130米の大きなプールです。
子供時代の樂しい場所の1つでした。
水深3米の飛び込み用プールがあり、そこへ思いっきり飛び込んで沈むだけ沈んでからプールの底を蹴り一氣に浮上するのが樂しかった思い出があります。
プールの外には芝生が拡がりそこへ敷物を敷くか、プールサイドの長椅子を使って泳ぐ合間にのんびり横になる事が出來ます。
今と違って健康的に日に焼ける事が出來ました。
當時は一寸した輕食コーナーもあり、フライドポテトやかき氷等をプールサイドで食べたひと時は極上の時間でした。
夕方はバーベキューやジンギスカンも樂しめ、夜は花火をする事も出來ました。
残念乍らプールは水着の人でいっぱいなのでお寫眞は撮れませんが、今も変わらず子供達の樂しそうな歓声が聞こえてきます。
そのプールの近くにはこの「第1グラウンド」と呼ばれている場所があります。
私の知っている頃はここは「健康広場」と云う名前でした。
その當時はここに寫っている柵は無く、誰でも自由に入れたものでした。
この廣い原っぱでよく遊んだものです。
夏の青空を背景にリゾートホテルがよく映えます。
思い出のコテージ
その広場の脇を抜けるとこうしたコテージが見えてきます。
この敷地内にはこうしたカナダ檜で造られたコテージが点在しており、宿泊客はホテルかこのコテージで泊まる事になります。
今では「グランピング」とか称するキャンプごっこの場所も用意されている様ですが、私が今回泊まるのはこのコテージになります。
子供時代、このコテージに滞在するのが何よりの樂しみでした。
ホテルや旅館と違い、1棟まるごとが自分達の部屋だったので、これはのびのびと出來ました。
傍を通るだけでバルコニーで飲んだジュースやテラスに長椅子を出して昼寝をしていた記憶が蘇ってきます。
コテージには幾つか種類があり、2人用から最大8人用の部屋が用意されています。
昔は更にキッチンやロフトも附いており、自炊をする事も出來ました。
食材を賈い出しに行ってみんなで作って食べるカレーや鍋が良い思い出です。
この画像のコテージは347號室。初めて夏に泊まった思い出の部屋です。
この階段を上った先の玄關の手摺によく浮き輪や水着を紐で括り付けて干していたのを思い出します。
今でも迷う事無くこの場所へ行ける事が嬉しいものです。
この部屋も何度か泊まった事がありました。
このバルコニーに出てジュースを飲んで鳥のさえずりを聞いていたものです。
後年、高校の友人と泊まったのもこの部屋であり、その番号は345番。
今もほとんど変わらずにそこに在るその様子は、自分が昔に來てしまったかの様な錯覺を致します。
夏の強い日差しは木陰のコントラストをより一層引き立たせます。
暫し立ち止まり蝉の声を耳にすると都會では考えられない位に多種多様な鳴き声を愉しむ事が出來ます。
子供時代の夏は虫取りを樂しんだ身の上。今でもどの木のどの辺りに蝉が居るのか目安を附けて虫の背後から近附く事が出來ます。
この廣い敷地にこうしてコテージが点在しているのですが、その場所と位置関係を掴んでおかないと迷う事でしょう。
こうした入り組んだ細い道を通って辿り着くコテージもあり、基本的に施設の人は案内をしないので自力で辿り着くのが前提になります。
我が家も例外ではなく、初めの頃は地圖を片手に自分の部屋のコテージを探したものでしたが、それは子供にとって冒險の様であり「自分のコテージを探す」と云う謂わば一つの文字通りの「クエスト」だったのです。
イマドキはどうでしょうか?
スマートフォンをはじめとした「すぐに答えと結果を出す」と云う事だけに傾倒し、こうした探索を疎む様になったのは實に勿軆無い事だと思います。
ただそこを歩いているだけでも自然は色々なものを私達に氣附かせてくれます。
それを感じ取る事が出來るか否かで幸福の度合いは大いに違ってくるのであります。
もしもトトロが居るとすればこう云う森の中なのかもしれませんが、本當に居るとすればそれはその場所に立って感じる様々な自然の作用に他ならないのかもしれません。
ここにはこうした「忘れていたもの」があるのです。
愈々チェックイン。コテージに泊まろう!
祖父の形見の腕時計を見ると時刻はいつの間にか14時45分。
少し早いですがホテルのフロントへ行き、コテージの鍵を戴きましょう。
そして印を附けて戴いた地圖を片手に自分のコテージへと向かいます。
この瞬間はとてもワクワクするものです。
ここが私の泊まるコテージとなります。
いつの間にかこんなウッドテラスが出來ていましたが、建物自軆は昔と殆ど同じです。
さあ、ドアを開けて中へ入りましょう。
嗚呼、そうだ。このドアだった。…と昔を思い出します。
ドアノブの形が昔と違っていますが、木で出來たデッキを「トントントン」と音を立てて歩くと愈々懐かしさは最高潮に。
そしてドアを開けます。
こんなお部屋です。
家具が一新され、床が絨毯からフローリングになったのと間取りが少し変わっていましたが、この部屋です。
入った途端に木の良い香りがいっぱいに拡がります。この木の香りがとても好きです。
今や人間は無機質に囲まれて生活しています。
人の暮らしは便利になる一方、いつの間にか何かを犠牲にするものになっていったのかもしれません。
そこへこの木のぬくもりのある空間は張り詰めていたものがいっぺんに途切れる様な雰囲氣です。
人は無意識のうちに自然と共に在る生き方を欲していたものではなかろうかと存じます。
窓を開ければ木々を通り抜ける夏の風に蝉の声。懐かしい匂いがいっぱいです。
何十年も前のあの頃の匂いと同じ。あの頃と同じ壁、天井。それが今ここに、私はまさにそこに佇んでいるのであります。
荷物を降ろして一息ついて、懐かしさに浸り…。
さあ、暫しくつろいだ後はお風呂にでも行く事に致しましょう。
續く…。