時は15世紀半ばから17世紀にかけて、欧州から船出した数多の船乗り達は新たな新天地を求め、或いはまだ見ぬ貴重な品々を求めて大航海の途に就いたのでありました。
これを俗に「大航海時代」と申します。
そして、その航海中に船上で日々食べられた食事は想像を絶する程に劣悪で過酷なものであったと見聞しております。
今の様に食糧の保存技術も無ければ知識も不十分だったので、これも長い人類の歴史を鑑みれば致し方無いところであります。
當時の船上では主に塩漬けの肉や魚、乾燥した豆や麥類、硬いビスケットが食されていたそうで、水の代わりにワインやラム酒、麥酒が用いられていたそうです。
そこで今回はこの情報を基にご家庭でも美味しく食べられる「大航海時代の食事」を再現してみる事に致します。
以前から「獨海軍潜水艦の食事」やら「旧帝國海軍のカレー」なんかを作って參りましたが、それに續くカタチで海にちなんだ料理の3部作と云うところであります。
獨海軍潜水艦フルコース - 一人を楽しむブログ (hatenablog.com)
金曜日はカレーの日 - 一人を楽しむブログ (hatenablog.com)
下準備
まず、おかずとなる「塩漬けの肉と魚」を用意します。
當時の物は塩水に漬けた肉や魚を更に塩の詰まった樽に入れて貯蔵した様ですが、當然乍ら塩分の過剰摂取になるので、そこは加減します。
この様に肉や魚の一枚一枚に塩を振ります。
その儘では生臭さが出てしまうので、この様にローズマリーを用意します。
ローズマリーと一緒にこの様にラップで包んで冷蔵庫で寝かせておきます。
これで数日は保存が利きます。
愈々調理へ
さて、肉と魚を貯蔵して3日が過ぎました。
そろそろ消費する事に致しましょう。
その儘でも結構ですが一度水に浸して塩抜きすると良いでしょう。
ローズマリーと一緒にフライパンでよく焼きます。
お好みで胡椒等ふると尚結構ですが基本的に味附けをする手間がかからずとても樂です。
魚は豆の罐詰と一緒に煮込んでスープにしてオートミールにかけてお粥の様にして戴きます。
船乗り達は乾燥させたニンニクを持ち込んでいたとの資料も有り、今回はニンニクを一緒に入れました。
これも魚に塩味が効いてますので特段味附けは不要です。
水と材料を入れて煮込むだけです。なかなか良い出汁が出ます。
21世紀の食卓に復活
ハードビスケットは輸入食品の乾パン(ネイビービスケット)で代用します。
そこに當時でも保存食だったチーズとバターを添えます。
スープはオートミールと一緒に戴く「お粥」の様に仕上げております。
結構嵩が増えておなかが膨れます。
忘れてはならないのが酒類です。
船の規律を保つためにも乗組員に酒を出す必要があった様ですが主な目的は保存の利かない水の代用です。
今回はお洒落なデカンタに入れたゴールデンラムを船長氣分で硝子のゴブレットに入れて呑みます。
ライムは英國で船上でのビタミン不足と二日酔い改善に導入されたとの事でしたので今回の食卓にも忘れずに並べておきます。
おうちで海の男氣取り
今は文明の利器たる冷蔵庫を始めとした様々な道具がございます。
大航海時代の船員は實に悲惨な食生活で母港に帰投する迄に水夫の半分は死ぬとも言われていたそうです。
しかしあれから数世紀が經ち、今日の科學文明の進歩は目覺ましいものがあります。
現在の技術でこれら食材と料理を用意してみると日々の慌ただしい日常に於いて非常に有用な事がわかりました。
食材は或る程度日持ちして尚且つ調理も簡單なのであります。
残念乍ら歴史の事實はファンタジー世界の如く海に夢見ると云った雰囲氣ではなかったのでありますが、ここは一つ閉塞的な日常の鳥渡した樂しみとして、七つの海を股にかける船長になったつもりで海の男の食事を愉しんでみるのもまた一興であります。
食後の珈琲も忘れずに…。
なんたって「船長」ですから!