旧帝國海軍と現海上自衛隊では金曜日にカレーを出す事になっている様でございます。
そこで私もそれに倣い、少しこだわってカレーを供する事に致しました。
帝國海軍の割烹術參考書に則り
数年前に横須賀の戰艦三笠を見學した際に近隣の料理店で當時の献立を忠實に再現した「横須賀海軍カレー」なる物を食した事がございました。
余談ですが、祖父も親父も嵐貫寿郎さんが出演されていた『明治天皇と日露大戰争』と云う映画がとても好きでありましたが、私もそうなのであります。
親子三代で同じ映画のファンなのでありますが、日本人たる者、この偉大なる戰艦を參観し、當時の出來事を心に刻んでおかない訳にはいかぬと思っておりました。
その折に戴いてきたチラシに色々と書いてありましたが、帝國海軍の料理の製法を端的に記した「海軍割烹術參考書」を文字通り參考にその記述に則り家で作ってみる事に致しました。
作り方
作り方は以下の如くであります。
材料
玉葱、人參、ジャガイモ、牛肉、コンソメスープの素、牛脂、小麥粉、カレー粉、塩
工程
1、コンソメスープでご飯を炊く
2、牛脂を敷いたフライパンで小麥粉とカレー粉を炒る
3、野菜(人參、玉葱)と肉(牛肉)を炒める
4、2の小麥粉とカレー粉を入れてコンソメスープを加えて煮込む
(ジャガイモはこの時に入れる)
5、とろみが出たら塩で味を調える
6、盛り付けて完成
(※)詳細な分量はその時々で臨機応変に対応します。
いちいち分量を量らないのが私の作り方でございます。
當時の献立に忠實に
文献に依るとカレーの他にサラダと牛乳、藥味として福神漬けとチャツネが添えられていた様であります。
勿論、その辺も忠實に再現したく存じます。
軍艦旗を掲げて軍歌を流して、いざ戴きます。
横須賀で食した物よりも若干塩味が強かったのですが、概ね同じ様な物が出來上がりました。
ひと手間加わっているだけあって、これはレトルトは勿論、市販のルーでも中々お目にかゝれない味でございます。
この旗を立てている入れ物は昨年宮城(今は皇居と云う呼び名が一般的です)を見學した際にお土産で賈ったお酒の徳利であります。
菊の御門と共に少々すすけていますが、ちゃんと「參観記念」と書かれております。
少々面倒でもカレーをちゃんと作ってみる
イマドキの人はレトルトでしかカレーを作った事が無い方が多くいらっしゃると聞きましたが、やはり「ちゃんと作ったカレー」はそれなりに美味であり、野菜や肉もきちんと摂れるので榮養的にも優れております。
カレールーの無い昭和の時代に還り、イチからカレー粉を炒るところからやってみると何かと勉強にもなり面白いものでございます。
少なくとも即席のカレーしか知らない事よりもずっと豊かな生活を營める事でございましょう。
當時の海軍でもカレーの榮養的な面を評価している様であり、限られた物資を合理的に使う事が出來るので何かと重宝していた様であります。
また、金曜日にカレーを出す事に因り曜日の意識を新鮮にして氣分を盛り上げたとも聞いております。
コレはお一人様を愉しむ生活でも大いに活用出來るのでございます。
尚、この料理ですが具を煮込んだ段階で醤油と味醂で味附けをすれば「肉じゃが」になります。
こうした調理の工夫も素晴らしく、多目に煮込んでおいた物の一部はカレーにせずに別個にしておき、後日肉じゃがにすると云った風にすれば便利であります。
軍隊では何かと時間の制約も厳しいものでありましたでしょうが、こう云う工夫が一人暮らしの繁忙な日々でも活用出來るのであります。
戰争の是非は別として、先の方々の創意工夫を今に活かす事は何ら間違いではないと考えております。
こうしたところから日々の暮らしを愉しむ事もまた、お一人様を愉しむ秘訣と考えているのでございます。