一人を楽しむブログ

孤独ならぬ御一人様を愉しむ為の備忘録。

おうちで開放式B寝台

お題「#おうち時間

 

 

「stay home」と声高に叫ばれておりますが、私にとっては社會がどの様な状況下であろうとも「家に居る限りおうち時間」なのであります。
然して寝る直前迄、否、寝ている時間でさえ「おうち時間」なのでありますれば、外出自粛とともににわかに出現した概念でもないのであります。

 

…とは申せ、こう云う事態でありますれば、いささかの工夫が必要になって參ります。
何分にも時間が有りますので、普段やらない様な事を愉しめる好機でもあります。

 

そこでこの「おうち時間」最後の記事として、去り行く連休に思いを馳せ、今夜も或る「特別な場所」で夜を過ごそうかと存じます。

思い出の彼方へ行ってしまったあの列車を家の中で…

f:id:juvey:20200509214309j:plain

文字通り、夢の旅です。

私は以前の「電車ごっこ」の記事でも申し上げましたが、鐵道を使った旅が好きで過去には色々と愉しんで參りました。

 

その中で一際大きな思い出として在るのが「ブルートレイン」の旅であります。
上野驛を夜に出發し、星屑を散りばめた様な夜の上越・羽越路をひた走り、明け方の日本海を眺め、朝日浴びる現地の驛舎に降り立つ…。
そんな浪漫溢れる旅路の記憶が遂にぞ忘れられず、とうとうこんな遊びをしでかしてしまいました。

f:id:juvey:20200509214314j:plain

寝台車ごっこ

あの心地良い揺れのする「開放式B寝台」通称「Bネ」または「二段ハネ」をイメージして寝床の周りに細工を致しました。
これは先に拵えましたバーカウンターの下でありまして、日頃「デッドスペース」となっていた場所を活用したものであります。

f:id:juvey:20200509214320j:plain

スペースの有効活用

カウンターの下にカーテンを附けただけの簡單な構造です。
兩脇から縄を張り、そこへカーテンフックを取り附けるだけであります。
100均ショップに丁度良い輪っかの附いた洗濯バサミの様なカーテンフックが賣っております。

f:id:juvey:20200509214325j:plain

カウンターの下は私の寝床

布団を敷けば出來上がりであります。
枕元には常夜灯兼讀書灯の電灯が取り附けてあります。
スイッチを切り替えれば明かりが変わるのは寝台車と一緒です。
(この灯具、20年以上前に中學時代の技術科の課題で造った物です。未だに動きます)

f:id:juvey:20200509214329j:plain

カーテンを閉めるとこんな感じ

更に雰囲氣を出す為に壁面にはクリーム色のビニールクロス(元々はシャワーカーテン)を画鋲で留めて貼り附けます。

(少々巧くいかず皴になってしまった事を氣にしてはいけない…)


そこへ銀色の粘着テープを横方向へ流す様に貼り附ければ國鐵の古き良き寝台車の氣分が出てきます。

f:id:juvey:20200509214333j:plain

雰囲氣を出す為に細部にこだわります。

この天井とカーテンに囲まれた狭い空間こそが最大の樂しみであり、あの胸をワクワクさせて乗った寝台特急の思い出が蘇ります。

さあ、出發進行!

f:id:juvey:20200509214337j:plain

「列車は定刻通り上野驛を發車致しました」

カウンターの兩脇が棚になっているので、そこへパソコンを設置、更に小さなテーブルを用意すれば準備完了であります。
私だけの夢の列車が今夜も空想の驛を發車するのであります。

f:id:juvey:20200509214342j:plain

夜汽車の車窓に乾杯!

静寂の中、絶え間なく聞こえるリズミカルな走行音、流れゆく車窓。そして時折聞こえる機関車の空笛…。
それを旅路の供に寝酒を一杯。
星が、光が、きらめく車窓が、旅人を素晴らしい幻想の世界へと誘います。

f:id:juvey:20200509214346j:plain

寝間着も勿論、あの浴衣

数年前に大宮に在る専門店で賈ってしまったブルートレインの浴衣(新品のレプリカ)が私の寝間着です。
今回は民營化後の物ですが、洗濯中の時は國鐵時代の物(工マークがびっしりと並んでいる柄)を着ております。

 

胎内回帰と申しましょうか、狭い場所が落ち着くのであります。
昨今だいぶ暖かくなって參りましたが、早朝は少々冷える日もございます。
こうしてカーテンで寝床を囲っておくと意外と暖かいのであります。
朝になって「寝台」のカーテンを開けた時の朝日の眩しさは夜の闇を裂いてひた走り目的地へ到着するあの列車の旅情を彷彿とさせます。

今夜もあけぼのに乗り込もう!北斗星を満喫しよう!

今は動画サイトで色々な夜行列車の車窓を樂しむ事が出來ます。便利な世の中であります。
時間が來たらパソコンを停止出來る様にしておけば、いつ眠っても大丈夫であります。

 

あの心地良い走行音は恰も旅人に安らぎをもたらす子守唄の様であります。
酒が廻りほろ酔い氣分の良い心地で床に就くのは誠に良いものであります。
(健康面に於いて、胃や肝臓に負担をかけるので流石に毎日は出來ませんが…)

 

何かと神經を使う複雑な今日の社會でありますが、一日の終わりの最後の瞬間だけでも自分の最高の時間の中で終える事が出來れば、それは良い一日だったと思えるのかもしれません。

 

 

翌朝、起床時間には枕元で「ハイケンスのセレナーデ」のオルゴールが流れます。
そして「おはよう放送」と呼ばれる車内案内が聞こえてきます。
私の電話に入っている録音したアラーム音なのですが、コレが不思議と眼が冴えるのであります。

 

あと少しで秋田驛…。寝台の中で着替えて荷物をまとめてデッキへ向かいましょう。
清々しい朝、一日の始まりを樂しく迎えられゝば、或いはそれも良い一日なのかもしれません。

f:id:juvey:20200509220241j:plain

目覚めの一杯は冷水を「紙コツプ」で

おうち時間とは「何かをして御仕舞」ではなく、今この瞬間、いつもいつも自分の心を癒すものであり、次の瞬間も何かを愉しむ事が出來るものだと思うのであります。